臓器移植

急性肝不全(劇症肝炎)治療チーム

■急性肝不全とは?


生命維持に不可欠な臓器肝臓は、時に「沈黙の臓器」と言われるほど予備能力が高く、常に代謝や解毒などの役割を果たしています。 しかし、何らかの原因によって急激に肝細胞が破壊され、生命が維持できないほどに肝臓の機能が低下する病態が急性肝不全です。 昨日まで健康だった方が数日から数週間で死に至る可能性もある非常に恐ろしい病気です。


■急性肝不全の原因は?


ウィルスや薬剤など外的な要因によって激しい炎症が引き起こされること(劇症肝炎)もありますが、原因が特定されないことも少なくありません。 原因を取り除いた後も、肝臓の機能が改善しなければ生命維持は困難であり、集中治療が必要となります。


■急性肝不全の治療は?


急性肝不全の治療には、大きく分けて内科的治療・外科的治療があります。


1.内科的治療

肝臓が再生するまでの間、薬を使って肝臓の機能を肩代わりする必要があります。 代謝や解毒、蛋白合成、消化液の産生、栄養の貯蔵など多くの役割を担っている肝臓の代わりをすることは容易ではありません。 また、その間に弱っている身体に感染などが引き起こされても危険な状態となるため、厳重な全身管理が必要となります。 かなり重症の場合には肝臓の再生が間に合わず、救命は困難になります。


2.外科的治療

肝臓全体が急激に弱ってしまう急性肝不全に対する手術は、肝臓全体を取り換える肝移植のみです。 本邦では生体肝移植と脳死肝移植が治療法となります。 手術そのものは簡単な処置ではありませんが、病因となっている弱った肝臓を取り換えるため、高い救命率があります。



■内科的治療と外科的治療 どちらが有利?


内科的治療と外科的治療でいずれかが完全に優れているということはありません。 内科的治療は日々進歩していますが、集中管理を行っても人間の肝臓の機能を完全に補完することはできず、病状が進行すれば救命出来ないこともあります。 外科的治療は成功すれば救命率は高いものの、適切なドナー(肝臓をあげる人)が必要であり、大きな手術になるため手術の侵襲・リスクも無視できません。 それぞれ一長一短ある治療法ですが、個々の患者さんにとって適切な時期に、適切な治療を行うことが重要となります。



○当院での取り組み

■急性肝不全治療チーム


外科治療(肝移植)の方が救命率・生存率が高いのは事実ですが、ドナー確保の問題、合併症の存在などハードルも高く、全例に移植を行うわけにはいきません。内科的治療で軽快するものは全身管理を続け、重症のため内科的治療で改善しないものは肝移植を行うのが理想的です。
しかし、急性肝不全は短いものでは数日で死に至る病気であり、状態が悪くなってから移植の準備を始めたのでは間に合わないこともあります。その移植時期の見極めが非常に難しく、専門家でも迷うことの多い問題です。

そこで当院では、急性肝不全患者は全て初診時から消化器内科・外科による急性肝不全治療チームが診療に当たっています。 初診時から内科・外科の専門医がチームを組み、評価・検討を繰り返します。内科的管理を続けながら、肝移植のタイミングを逸しないように移植の準備も同時に進めておく体制になっています。


Photo_急性肝不全_No.1


■肝移植のハードル~ドナーの存在


肝移植が可能であるか、その最初の大きなハードルは、適切なドナー(肝臓をあげる人)が見つかるかどうかです。 ドナーには様々な条件がありますが(肝移植の項参照)、ドナーが見つからなければ重症の肝不全であっても肝移植を行うことはできません。 急性肝不全のように数日から数週間で命を脅かされる病態では、緊急に肝移植が必要となることも多く、ドナーが確保できないために肝移植による治療が間に合わないことも珍しくありません。

当院では、救命のために移植が必要な場合は速やかに移植を行えるように、ドナー確保の可能性を損なわないよう様々な努力を行っています。


1.生体肝移植・脳死肝移植の可能性

肝移植には、親族・姻族の方から肝臓を一部もらう生体肝移植と、脳死で亡くなった方の善意によって提供された肝臓をもらう脳死肝移植があります。
当院は脳死肝移植を行える数少ない認定施設でもあります。生体肝移植・脳死肝移植の両方の準備を同時に進めることによって、できるだけ多くの患者さんに肝移植の選択肢を確保出来るように努めています。


2.血液型不適合移植

肝移植でも、輸血のようにドナー(あげる側)とレシピエント(もらう側)の血液型が治療成績に関わってきます。 血液型の相性が悪い場合(血液型不適合)には治療成績が悪いとされ、そのドナーからの肝移植は行わない施設も少なくありません。
当院の特徴として、血液型不適合移植に積極的に取り組んでおり、さまざまな工夫を取り入れることにより、通常の肝移植と同等に近い良好な成績を収めています。


3.移植肝の大きさ

生体肝移植の場合にドナーの肝臓は、ドナーに「残す肝臓」とレシピエントに「あげる肝臓」の二つに分けられますが、どちらも大きさが足りなければ肝不全という危険な状態になります。そのため肝移植の前には、ドナー・レシピエントの両方にとって肝臓の量が十分かどうか、慎重に画像解析を行っています。 ドナー・レシピエントの安全性を確保し、かつ肝移植の機会を損なわないよう全てのドナー候補の方に3D画像解析システムを用いた肝容量評価を行っております。



■選択肢としての肝移植


前述のとおり、肝移植の治療は非常に強力ですが、それなりの準備が必要な大がかりな処置になります。 肝移植が必要かどうかの判断は専門家にとっても非常に難しく、内科的治療の効果が出てきた場合には必ずしも肝移植を行う必要はありません。

当院では、内科的治療だけでは治療が難しいと思われる患者さんには、出来るだけ肝移植の選択肢を確保するべく早い段階から生体肝移植・脳死肝移植の申請準備を開始します。 しかし、その中には移植を行わずに軽快した患者さんも多く、実際には申請した患者さんのうち肝移植を行った方は4~5割程度です。

Photo_急性肝不全_No.2


■当院での治療成績


当院で治療を行った急性肝不全の患者さんのうち、内科的治療だけで救命したのは非昏睡型で81.4%、昏睡型で33.3%です。 さらに改善困難と判断すれば肝臓移植を行い、全体の救命率は昏睡型で64.8%と良好な成績を収めています。

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