ごあいさつ Message

肝胆臓領域のあらゆる疾患に
個々の病態に応じた最適の治療方法で臨む『全方位戦略』

北郷 実 医師-肝胆膵・移植班|慶應義塾大学病院 一般・消化器外科


慶應義塾大学医学部外科学教室は1920年に発足し2020年に100周年を迎えました。私どもの肝胆膵・移植班は、外科学教室(一般・消化器)の一グループとして1971年より臓器別の旧胆道班(肝胆膵グループ)と1992年より領域横断的な移植班がそれぞれの領域でハイレベルな医療と研究活動を行い、2011年にこの二つの班が統合され現在に至っております。

肝胆膵・移植班は、肝胆膵領域とその近接臓器(脾臓、十二指腸など)の良性から悪性疾患の診断・治療を行っています。本邦における癌の死亡数は肺癌が第1位ですが、肝癌(転移性肝腫瘍含む)、胆道癌、膵癌などを合わせた死亡数は肺癌より多く、その5年生存率は未だ不良です。私どもはこの肝胆膵領域の難治癌に対し、外科的治療として低侵襲治療(腹腔鏡下治療)から拡大手術(大血管および多臓器合併切除を伴なう)まで安全に提供することを目指して診療を行っております。さらに化学療法や放射線療法を併用した集学的治療により癌の根治性を高め予後を改善する努力もしております。治療として移植が必要な患者さんには生体・脳死を合わせた肝移植も数多く施行し、その生存率はとても良好なものです。これらの診療は私ども肝胆膵・移植班のみならず血管班や消化器内科、腫瘍センター(腫瘍内科医)、放射線診断・治療科、病理診断科、麻酔科、腎内代謝内科、薬剤部、感染制御部など他診療科や他部門の協力と連携で行われております。私どもはこの総合力で個々の患者さんに対し最善の治療法を提案し、安全で最良の医療を提供致します。また、肝胆膵領域の悪性腫瘍に対し関連病院との多施設臨床研究、iPS細胞と肝臓の脱細胞化骨格を用いた再生医療の実現化などの基礎研究、基礎教室や他大学との共同による癌のバイオマーカー探索などのトランスレーショナルリサーチにも積極的に取り組んでおります。さらに、肝胆膵移植外科医の教育にも注力しております。一般・消化器外科研究室の一員として外科専門医から消化器外科専門医として広く食道、胃、大腸、肝、胆道、膵臓、乳腺、血管の様々な疾患の診断・治療を学ぶとともにリサーチマインドを持ったアカデミック外科医を養成します。さらに大学病院や肝胆膵高度技能修練施設である多くの関連施設と連携して高度技能専門医を養成します。我々は、「臨床・診療」「研究」「教育」を三位一体としてより良い最高の医療を目指します。


2020 年 4月 1日
外科学(一般・消化器)准教授
北郷 実