目 次
1. | 膵嚢胞性疾患とは? |
2. | 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは? |
3. | 粘液性嚢胞腫瘍(MCN)とは? |
4. | その他の嚢胞性疾患 |
浸潤性膵管がんのほか、膵臓に発生する腫瘍としては膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary-mucinous neoplasm:IPMN)や粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN)といった比較的良好な予後を特徴とし、過形成から浸潤がんまで幅広い組織像を呈する膵嚢胞性疾患と呼ばれるグループが存在します。2012年に国際ガイドラインが改訂され、最近これらに対しての手術適応が確立されつつありますが、いまだ専門的な知識、技術が必要ですので治療経験が豊富な専門施設を受診されることをお勧めします。
当院では症例によっては低侵襲な腹腔鏡下手術や機能温存を目指した膵中央切除などの縮小手術を行っています。また膵内分泌腫瘍や膵充実性偽乳頭状腫瘍(solid-pseudopapillary neoplasm:SPN)、漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm:SCN)といった腫瘍も上記疾患と類似した検査所見を示すことがあります。それぞれ悪性度が異なるため前述の画像検査を組み合わせて詳細な鑑別診断を行い、最適の治療方針を決定しています。
IPMNは高齢男性に多く、膵管(膵臓の中にある膵液の流れる管)に粘液を有する腫瘍細胞が乳頭状に増殖する腫瘍です。ブドウの房の様な嚢胞の形を呈する「分枝型IPMN」と主膵管が全体的にもしくは部分的に拡張する「主膵管型IPMN」、および分枝にも主膵管にも変化をきたす混合型があります。主膵管型IPMNは悪性である例が多く、治療として手術が第一選択です。分岐型IPMNは、悪性化することがありますが、変化は比較的ゆっくりであるため、大きさや形の変化に注意しながら経過観察することができます。当院の手術適応は主膵管型(10mm以上)、膵管内または嚢胞内に腫瘤様の結節(EUSまたはIDUSにて5mm以上)を認める場合、有症状者、膵液を採取して細胞を調べる検査(細胞診)で陽性(悪性)の所見など悪性が疑われた場合です。 (*膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN))
MCNは中年女性に多く、嚢胞内に多量の粘液を貯留しています。将来癌化する可能性が高いといわれています。治療法は、原則手術が必要となります。当院では腹腔鏡を使用した侵襲の少ない手術を積極的に行っています。
SPNは若年女性に好発する低悪性度腫瘍で多くは無症状です。男性の場合は稀ですが悪性度が高いことが多いです。当院での切除例では70%で病理学的に悪性例でした。診断がついた時点で治療は原則的に手術であり、当院では腹腔鏡下手術を積極的に行っています。
SCNは中年女性に好発する嚢胞性腫瘍でほとんどが良性腫瘍であるため原則経過観察となります。しかし、他の悪性腫瘍と鑑別が困難な場合や、症状を伴う場合、サイズが大きい場合に手術が考慮されます。
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