目 次
1. | 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは? |
2. | どのような症状があるのでしょうか? |
3. | どのような検査を受けるでしょうか? |
4. | 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の治療は具体的にはどうするのでしょうか? |
5. | 生活上で注意していただくこと |
6. | 慶應義塾大学病院での取り組み |
膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm:IPMN)とは、膵腫瘍の一種で、膵管(膵臓の中にある膵液の流れる管)の中に、乳頭状(盛り上がるよう)に増殖する膵腫瘍で、どろどろとした粘液を産生することで膵臓の中に嚢胞(水の袋)をつくる疾患です。いわゆる典型的な膵がん(膵管がん)とは異なり、良性から悪性までさまざまな段階で見つかります。一生にわたって症状が現れない方もいますが、長期間の経過を経て膵がんを発症したり、膵炎になったりする方もいるので、しっかり様子を見る必要のある病気です。
無症状のことがほとんどですが、稀に粘液が詰まって膵炎になることがあり、その場合は腹痛、背部痛、発熱などの症状をきたすことがあります。がん化して進行してきた場合には痛みや黄疸などをきたすことがあります。
検診などで膵嚢胞(膵臓内の水のたまり)や、膵管が太いこととして偶然みつかる方が多い一方で、膵炎になってから発見される方もいます。悪性の可能性があるかどうか評価するために、MRCP/MRIかCT検査をします。IPMNは3つに分類されます。主膵管の中に腫瘍ができて、全体的あるいは部分的に拡張する「主膵管型IPMN」と、ブドウの房状に多房性の嚢胞の形を呈する「分枝型IPMN」、および両者が混在する「混合型IPMN」があります(図1)。
がんが合併する可能性が高いといわれており、様々な検査を総合的に判断して一般的には手術治療をおすすめすることが多いです。ご病状や体力によっては手術が体への負担を増すこともあり、場合によっては手術せずに経過をみることもあります。
分枝型IPMNの場合は良性から悪性までさまざまであり、まれではあるものの悪性のIPMNであると疑わしい患者さんは手術が必要です。生検検査などで確定診断を得ることが難しい疾患ですので、画像検査の結果を見ながら国際診療ガイドラインにのっとって悪性のIPMNを見分けていきます。悪性の疑いが少しでもある場合は精密検査をおすすめしております。
精密検査では超音波内視鏡や内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査が行われます。超音波内視鏡は体への負担が少ない検査ですが、CTやMRI検査よりも精度が高く、非常に小さな病気も発見することが可能で非常に有用です。内視鏡的胆管膵管造影検査は合併症として膵炎をきたすことがあるため、がんを強く疑う場合や、手術を検討している際に十分注意をしながら検査をいたします。超音波内視鏡での針生検(EUS-FNA)による確定診断については、嚢胞内の液状成分が漏れることで腹膜播種をきたす可能性があり、日本国内ではあまり施行されていません。病気の状況によっては安全に施行することが可能な場合もあり状況をみて判断しております。
良性の分岐型IPMNと診断されても、時に悪性化することがあるため、定期的な画像検査を受ける必要があります。症状により半年から1年に1回MRCP/MRIあるいはCT検査、エコー検査をおこなっていきます。検査の期間は病気の状態によって判断いたします。
悪性あるいは悪性を強く疑う場合は手術により摘出します。病気の場所によって切除方法は異なりますが、膵臓手術は難度の高い手術ですので、手術件数の多い施設で経験豊富な医師に手術をしていただくことをおすすめします。手術範囲により膵臓からのインスリン分泌量が減少する場合は、インスリン自己注射療法を導入することがあります。また、ご高齢の方にも発症することが多く、体調によっては手術を避けることもあります。進行していて手術で取ることが難しい場合は、化学療法(抗がん剤)や放射線療法を検討します(*膵がんの項目4を参照ください)。また、病気によって胆管や十二指腸が詰まってしまうことがありますが、そのときはステントという管を通して再開通させたり、胃空腸バイパス術(胃に小腸をつなげる手術)などで食べ物や胆汁の逃げ道を作ったりします。
まだ確定はしていませんが、他臓器のがんになりやすいとの意見もあります。過度な飲酒を避け、禁煙し、健康な生活を心がけ、地域の定期的ながん検診や人間ドックは受けることをおすすめします。
MRCPなどで経過観察をして、悪性化が疑われる場合は超音波内視鏡や逆行性胆管膵管造影、経口膵管鏡といった特殊な内視鏡検査を専門的におこなっています。消化器内科と一般消化器外科が密に連携し、垣根なく患者さんの精査、治療に携わっています。
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